2012年3月アーカイブ

概要

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FRPを使った成型は、メス型を使う方法と、オス型を使う方法があります。

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メス型を使った成型では、積層面が裏になるので、表面の平滑度は型の表面と同じになり、きれいな製品が仕上がります。しかし、完成形を裏返したような型を作成する必要がるため、型の製作はオス型を使った成型よりも手間がかかります。

上の図で、赤い部分が積層面が露出する部分です。積層面には、ガラス繊維の凹凸や樹脂の凹凸が露出します。

オス型を使った成型では、積層面が表面になるので成型後に表面の加工が必要となり手間がかかります。しかし、型は製品の形をそのままで用意するれば良いので、作成するのも簡単ですし、場合によっては型を作る必要がない場合もあります。例えば、作成する物と同じような形をした既製品の現物を型として使ってしまうこともできます。典型的には、FRPの板を作るケースです。適当な大きさのガラス板を用意して、直接積層すれば出来上がりです。

同じ形の物をたくさん作ったり、ある程度の大きさのものを作る場合には、オス型で成型すると表面の処理が大変なので、メス型を使った方が効果的です。逆に、小さな物を少しだけ作るときにはオス型を使った方が効果的です。また、完成品の精度が必要な場合もメス型を使います。メス型を使う場合、通常は、最初にオス型を作り、メス型はオス型から成型します。

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オス型

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オス型を使った成型品

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メス型用のオス型

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オス型から成型したメス型

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メス型を使った成型

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完成品

以上のように、オス型を使った成型は、メス型を使った成型行程に含まれるので、以下ではメス型を使った成型について説明します。

原型について

最初に行う事は、原型となる型を用意することです。原型を作成する際に注意する事は次のような点です。

正確な形状

原型の作成では、精度を充分に確保する必要があります。原型の精度と仕上がりが最終的な製品にそのまま残ります。

抜ける形状

これは、積層した後に型から製品が取りだ出る形状ということです。 例えばボールのような球体や、風鈴のように下がすぼまった形状を積層すると、型から取り出すことができません。そのような形状が必要な場合、メス型を複数に分割して成型する必要があります。

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分割して成型した例

FRPの積層時には型から抜けやすくするために、離型剤を塗布するのですが、それでもかなりの力が必要となります。 ちょうど、強力な両面テープで接着されている物を剥がすような感覚です。ですので、いくら形状的に離型可能であっても、離型できないこともあります。例えば、筒の中にFRPを積層しても、筒の横から離型する事はおそらく不可能です。

角や小さなRの曲面はNG

積層するガラス繊維は、かなりコシがあるため急な角度に曲げる事はできません。仮に無理に曲げても、樹脂が硬化する前にはがれてしまいます。できる限り急な角度を持たない形状に留意するべきです。しかし、どうしても急な角度が必要な場合があります。例えば、上の写真の本体とフランジの接するラインです。このような形状の場合、かなりの手間がかかりますが、積層時に工夫する事で成型することも不可能ではありません。

細かい部品はNG

プラモデルのような細かな部品は、FRP成型には向きません。

留め接ぎ

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留め接ぎは簡単なように見えて、実際にやってみると接続部分に隙間が開いたり、菱形になってしまったりして結構難しいです。

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HESプロジェクトで使ったマルノコを使う留め接ぎジグの調子が良いので紹介します。

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まず、適当な大きさの合板かMDFの板を用意して、2辺に材料の固定位置となるガイドを取り付けます。ガイドは可能な限り正確に90度の角度にします。このとき、板の端ではなく5cmぐらい奥まったところに取り付けたほうが、マルノコの切り出しが安定します。ガイドの高さはあまり必要ないので、1-2cmぐらいで良いと思います。

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ベースの板の反対面に、マルノコのレールとなる板を取り付けます。この板は上で90度の角度で取り付けたガイドに対して、正確に45度となるようにします。また、位置と幅はマルノコのベースとブレードの関係で決まりますが、ブレードができるだけ正確にガイドの中心を通過するようにします。

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マルノコをレールの間でスライドさせて、ベースとガイドの板に切込みを入れます。これでジグは完成です。
続いて使い方です。

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まず材料の棒材をできるだけ正確にカットします。特に対向する2辺の長さは完全に一致させ、4本の幅もきちんと合わせます。

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完成時の配置を決め、間違えないように裏面に番号をマークしておきます。完全に正確にカットできれば場所は関係ないのですが裏表は重要ですので、マークは必ず全て裏面に行います。

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用意した材料をマークが見える向き(表面がジグ側)になるようにジグのガイドピッタリ付けてクランプで固定し、ジグのマルノコレール側からマルノコで斜線部分をカットします。この位置でカットする角を(A)とします。

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同様に材料の反対側を表面がジグ側になるようにジグのもう一方のガイドに付けてクランプで固定してカットします。この位置でカットする角を(B)とします。

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材料を固定するとき、ガイドの角にきちんと接していることを確認してください。クランプ操作などで矢印部分に隙間ができると正確なカットができません。

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全部の材料を同じようにカットします。片側が(A)位置、反対側が(B)位置でのカットとなります。

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マークした順番に組み立てます。カットが正確にできていれば接続面はピタリと合うはずです。全ての接続面が(A)と(B)の対向になり、ジグに多少の誤差があっても(A)と(B)では逆方向に誤差の影響が出るため吸収されます。

ここで、どうしてもピタリと合わない場合、数ミリ小さくなってしまいますが、次の方法で修正できると思います。ただし実際に行った事はありません。

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とりあえず、接続面の状況を無視して正確に四角形になるように角度と位置を整えて接着してしまいます。その後、両面テープでやや小さい捨て板を裏面に貼り付けます。貼り付けは各辺をしっかり行ってください。次の手順でカットした際、捨て板から外れると精度が失われてしまいます。場合によっては釘などで固定してしまった方が良いかもしれません。

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その後、四隅をジグを使ってもう一度カットします。これで、捨て板から外せば接着部分で分断されブレードの厚み分だけ短くなった4本の材料ができあがります。これを組み立てれば今度はピッタリと合うはずです。

大きな穴をあける

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小さな穴ならばドリルで簡単に開けることができますが、直径が3cm以上になるとドリルではきれいに開けることは難しくなるので、別の方法が必要になります。真っ先に思いつくのはジグソーに曲線用のブレードをつけて円切りジグを使ってカットする事ですが、この方法はお勧めしません。ジグソーは原理的に曲線を切るとブレードが外側に逃げるので切断面が垂直にならず、ジグを使っても真円には切れません。

トリマーやルータに円切り用のジグを取り付ければ、円形の板を作る事も、大きな穴や溝を掘ることもできます。この方法ならばジグソーのような問題はありません。

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このようなジグは、いろいろなタイプの物が市販されていますし、単純な構造なので簡単に作る事もできます。

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このテーブルは、中心に3mmの穴をあけてジグの軸として、ルーターで外周と内部の溝を切っています。

このタイプのジグは、プランジ機能のないルーターやトリマーでは使用する事はできません。厚い板をカットする場合、ルーターでは一度に切る事はできないので数ミリずつ掘り下げていく事になりますが、プランジ機能がないルーターではビットを回転させたまま少しずつ繰り出し量を加減すると言う操作ができません。一度止めてから繰り出し量を調整すると、再開時にビットが板に強く接触した状態でスタートする事になり、非常に危険です。私はプランジルーターを持っていなのですが、無理やりこの方法を試して怖い思いをした事があります。

最近良く使う方法は、ルーターリフターを使ってルーターテーブルで加工する方法です。
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図のようにMDFに穴をあけてセンターピンを立てたジグを、ルータースタンドに固定します。固定位置は、センターピンとビットの間隔がちょうど半径となるように調整します。そして、材料のセンターに明けた穴をピンに刺して、ぐるぐる回しながらルーターリフターでビットを繰り出してカットします。このとき使用するビットは、1/4インチのスパイラルビットです。

この方法は、プランジルーターと円切りジグを使った加工に比べて安定性が高く、精度の高い加工を行う事ができます。また、円切りジグで隠れてしまうような、10cm以下の中途半端なサイズの加工も容易にできます。

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例えば、このリングはThe Desktop "Nautilus"で作成したMDF製のリングですが、内径47mm、外径51mm、フランジ0.5mmです。肉厚は1.5mmしかありません。このような薄いリングの加工もこの方法ならば可能です。

ビットの繰り出し量を増やしていくとやがて材料を貫通しますが、貫通した状態で回転させると完全に切断されてしまいます。切断されるとセンター位置が不安定になるので、円の外周が荒れてしまったり、思わぬトラブルの元になります。ですので、最後の1周はビットを貫通させずに紙の厚さぐらいを残して切削すると安定します。残した部分は非常に薄いのでカッターなどで簡単にカットする事ができます。

ジグの固定位置とセンターピンの位置を変える事で、いろいろなサイズの円に対応できますが、ルーターリフターのハンドルが材料で隠れてしまうような位置の穴あけには使用できません。ルーターリフターによっては、ベルトやチェーンを使ってハンドル位置がビットから離れた位置にあるものもありますので、そういうリフターのほうが使いやすいと思います。

同じ大きさの穴をたくさんあけるときには、この方法を繰返すと面倒です。9mmぐらいのMDFにこの方法で穴をあけてテンプレートを作成し、ジグソーで大体の穴をあけてからフラッシュビットやテンプレートビットで整えた方が容易です。ルターリフターのハンドルが隠れてしまうような位置の穴あけでもこの方法が使えます。



最近、ルーターをプランジベースが付いたBOSCH 1617EVSPKに入れ替えたのを期に、Router Buddy 5-in-1 Universal Base Plate And Guideというジグを購入しました。

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対応機種に1617EVSPKも含まれていたのですが、なんと固定ベースの方だけに対応してました。よくよく見てみると1617EVSPKのプランジベースのプレート取り付け穴は固定ベースとは全く違う位置にあり変則的な3点止めです。仕方なくRouter Buddyの方を加工して取り付けることにしました。何度か使ってみたところ、ルーターテーブルを使用した方法に比べて手軽に使えるし、径の調整が楽にできて便利なジグです。しかし、センターピンをスライドさせるための銀色のバーと本体のプレートの隙間に切削粕が入り込み、木材に傷をつけてしまうことがありました。ただ、切削量を少なめにしたり良く切れるビットを使うなどして対処すれば問題ない範疇です。頻繁に円を切る場合にはこういう市販のジグも揃えておくと便利だと思います。

まっすぐ切る

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木材の平面が出たら次の加工は、目的の大きさにカットすることになりますが、この「目的の位置で、まっすぐ切る」と言う作業はなかなか難しいです。熟練した職人ならばノコギリ一本でもきちんとカットできるらしいですが、私には無理です。

もう、最初っからノコギリとカンナは諦めてますので、良さそうな方法をいろいろと試行錯誤して来た結果、次の方法が今のところベストです。

まず最初に、目的の大きさよりも僅かに大きめにマルノコでカットします。最初からマルノコで目的の位置でカットできれば良いのですが、マルノコ定規を使っても満足の行くカットが出来た例がありません。いきなりマルノコでカットするためには、マルノコの調整を入念に行う必要があり、ブレードの直角とマルノコ定規との平行を完全に正確にセットしなければなりません。しかし、構造的にこれらを精度良く調整することは難しく、0.1度でも狂っていると必ずカットの精度が落ちます。非常にシビアです。で、そんなことに時間を費やすよりも、マルノコの精度はさっさと諦めて、ラフカットに専念した方が効率的です。

次に、最近作った、片側だけオフセットできるルーターフェンスを使って、一辺の直線を確保します。

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このオフセットフェンスは最初の調整はちょっと面倒ですが、マルノコの調整よりもはるかに容易です。全く問題なくカンナ代わりに使えます。

次に、直線の出た辺を基準に目的の幅となるようにカットラインを引き、ルーターのストレートジグをカットラインに固定して、フラッシュビットで目的位置まで切削します。

ストレートジグは、まっすぐなMDFなどの板を両面テープで木材に貼り付けて使うことが一般的ですが、両面テープと木材は相性が悪く、表面が荒れている木材には効きませんし、滑らかな木材では効き過ぎて今度は剥がすのに一苦労します。また、MDFの表層が両面テープで剥がれてしまうことも多く、粘着材が張り付いてしまうと爪でこすって取らなければならないなど、面倒だらけです。

私は、システムバークランプと言う製品を改造した物をストレートジグとして使っています。

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このクランプは、クランプの一方のツマミがバーの両側に突き出ていて邪魔になるので、切削面側だけ切ってしまいました。この写真で上に向いている側が切削面側で、なにも突起物がないのがわかると思います。また、アルミ製のバーとルータービットのベアリングが直接接触するのも気持ち良い物ではありませんし、刃が僅かにアルミと接触するため、バーの片面にUHMW製の0.8mm厚のテープを貼り付けてあります。
そして、このクランプはスライドする部分とレールの隙間がちょっと大きく、クランプを締め付けても僅かにガタが残ります。この隙間も同じテープで埋めてガタをなくしています。

以上で、木材の2辺を正確に「目的の位置でまっすぐ」にカットすることができます。手押しカンナやテーブルソーなどの大型の機械を使った方が容易で精度も高いと思いますが、この方法では、簡単な工具だけあれば誰でも正確なカットが可能です。精度はだいたい0.4mm以内には収まると思います。慣れると更に高精度にカットでき、0.2mm程度までは追い込めます。ただ、これぐらいの精度になると、カットよりも墨線を入れる事のほうが難しくなってきます。